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2014年度(第14回 受賞者)

第14回 徳川宗賢賞受賞論文(2014年度)

優秀賞

  • ・「親族間で用いられる他称詞の運用―話題の人物を捉える視点と表現形式―」『社会言語科学』第16巻 第1号 109頁~126頁
    小森由里(国際基督教大学)
     ※小森由里氏は,現在,国際基督教大学・立教大学に所属.

萌芽賞

  • ・該当なし

受賞理由

優秀賞

  • ・「親族間で用いられる他称詞の運用―話題の人物を捉える視点と表現形式―」小森由里
     話題の人物を指し示す他称詞の運用体系は,これまでほとんど取り上げられることがなかった研究対象である.本論文では,対人関係によって変動する他称詞に注目し,実在する一親族31人を対象に,参与観察法によってデータを収集している.話し手と聞き手,話題の人物が形式選択に関与する,複雑な研究対象を扱ったことの挑戦的な着眼に加え,普段の言語使用を捉えるために行われた調査は,高く評価されるものである.
     本論文では,調査対象となった31人の親族が,血縁の有無や上下関係,年齢,世代などによって分類され,そのカテゴリーが他称詞の形式選択に関与している様子が,詳細かつ緻密な分析から明らかにされている.
     分析の際には,話し手,聞き手,第三者のいずれの視点で他称詞が選択されているかが問題にされている.そして,江戸時代から続く伝統的な親族内での他称詞運用の全体的な傾向と,各成員間の多様な関係性に応じた運用のあり方が,信頼性の高い分析結果から導き出された.このような方法論と質の高い分析結果は,親族の関係性や,伝統的社会と都市的社会のあり方を明らかにしようとする関連研究分野に,学際的なインパクトを与えるものと考えられる.
     以上のような理由から,本論文は徳川宗賢賞優秀賞としてふさわしいと評価された.

徳川賞を受賞して

  • ・小森由里
     本稿は,親族間の自然談話から他称詞の運用例を取り出し,他称詞の表現形式と形式が決定づけられる要因を明らかにしたものです.調査対象者が私の親族だったため,自然談話の収集は比較的容易でしたが,他称詞の分析には時間と労力を費やしました.自分なりに他称詞の運用メカニズムを解明したものの,本稿がどのように判定されるか不安でしたが,高く評価していただけ大変嬉しく光栄に思います.この場をお借りして,本稿の完成にお力添えくださった先生方にお礼を申し上げます.他称詞のメカニズムが複雑なため,十数ページの論文にまとめるのは厄介な作業でしたが,査読の先生方には,細部にいたるまで貴重なコメントを頂戴いたしました.また参与観察という手法とデータを緻密に分析する意義をご指導くださった国際基督教大学の日比谷潤子先生にも感謝申し上げます.今回の受賞を励みに,今後も人称詞の研究を続けたいと思います.ありがとうございました.