第1回 徳川宗賢賞受賞論文(2000年度)
- 「幼児の『聞き返し』-縦断的事例研究-」『社会言語科学』第1巻2号,1999. 白井純子、白井英俊、浜崎なおみ、菊地隆典、木畑典子、古田嘉照、渡邊欣(中京大学大学院)
- Analysis of Intercultural Interaction Management within a Party Situation『社会言語科学』第2巻2号,2000. Lisa C. Fairbrother(千葉大学大学院)
- 「親族名称に見られる関係表示-日本語と中国語の比較から」『社会言語科学』第2巻2号,2000. 薛鳴(セツメイ)(中京学院大学)
受賞理由
- 「幼児の『聞き返し』-縦断的事例研究-」白井純子、白井英俊、浜崎なおみ、菊地隆典、木畑典子、古田嘉照、渡邊欣
幼児の言語発達を縦断的に追い、幼児の「聞き返し」が大人にどのような行動を起こさせているか、またそれが幼児の言語発達にどのような働きをしているかを分析した論文。幼児と大人の相互のインタラクションに注目して言語発達を分析した視点は、発達心理学ではまだ光が当てられていないユニークなもので本学会の学際的志向性に相応しく、長いスパンでの記録観察、大量の発話処理に基づいた完成度の高い論文として評価された。
- Analysis of Intercultural Interaction Management within a Party SituationLisa C. Fairbrother
日本語母語話者と非母語話者間のやりとりを異文化間インタラクション管理の視点から考察した論文。接触場面全体をビデオカメラで捉える手法や、フォローアップインタビューでの参加者の気付きをもとに行った分析は独創性が高い。また参加者のインタラクションの類型、行動規範、問題処理の方法を抽出し異文化間インタラクションをホーリスティックに考察した点がとくに工学系言語研究者から高い評価を受けており、本学会が志向する、学問分野の壁を超えて有益な研究として受賞に相応しいと判断された。
- 「親族名称に見られる関係表示-日本語と中国語の比較から」薛鳴(セツメイ)
日本語と中国語の親族名称の体系と使い分けの比較を通し、両言語社会にみられる人間関係や価値観の相違を実証データと内省によって記述した論文。日本語と中国語、および両言語社会を均衡のとれた感覚と鋭い洞察力で考察したものであることと、この種の日中比較の社会言語学的基礎研究が待たれていたことが考慮され、受賞に相応しいと判断された。