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2001年度(第2回 受賞者)

第2回 徳川宗賢賞受賞論文(2001年度)

  • ・「ブラジル日系一世の日本語におけるポルトガル語借用―その形態と運用―」
    『社会言語科学』第3巻1号,2000.
    久山恵(ブラジリア大学)

受賞理由

  • ・「ブラジル日系一世の日本語におけるポルトガル語借用―その形態と運用―」久山恵
    ブラジル日系一世の日本語におけるポルトガル語借用の実態をインタビューと自然談話データを使って調査・分析した実証的な研究である。 論文の前半部は音声・音韻、形態、統語レベルにおける借用を外来語と比較しながら考察し、移民の時期やブラジル社会への同化度、ポルトガル語特有の形態の 影響などが、外来語使用との異なりを作り出しているとした。後半部では談話における言語使用の実態に着目し、ブラジル社会というコンテクストの中でより豊 かなコミュニケーションのためにポルトガル語が借用されていることを明らかにした。借用が一世たちのアイデンティティーや人間関係と深く結びついているこ とをホーリスティックに捉え,そこから日系社会の文化を炙り出した分析は、従前の借用研究には見られなかったダイナミックなものである。このような日系一 世の日常生活に根ざした実態調査は前例がなく、一世の年齢を考慮すると今を逃してはできないものであり、そのタイミングを逃さず根気よく調査をした意義も 大きい。現地に長期在住する日本人として、日系一世に対する深い理解力と研究者の鋭い洞察力をもってこの困難な調査を成功させ、貴重な研究成果として結実 させたことが高い評価を得、受賞に相応しいと判断された。