第1回スチューデント・ワークショップ

日時:
2019年9月15日(日) 10:00〜12:00
場所:
桜美林大学新宿キャンパス
会場案内図
参加費:
無料

第1室 「ディスコースから捉える『自己の位置づけ』-4つのフィールドから-」

会 場
創新館本館J302
責任者
井濃内歩(筑波大学大学院)
司会者
井出里咲子(筑波大学)
発表者
青山俊之(筑波大学大学院)
井濃内歩(筑波大学大学院)
狩野裕子(筑波大学大学院)
酒井晴香(筑波大学大学院)

本ワークショップは,参与者を取り巻く空間的・時間的な相互作用としてのディスコースを中心に「自己の位置づけ(=アイデンティフィケーション)」の実践を捉えることを目指す.「自己」をめぐる古典的な議論を言語人類学の視座から捉え直す.発表者はそれぞれ異なる4つのフィールドのディスコース―聖書テクスト(「hinnēnî」)からみるユダヤ的自己・島の地域コミュニティにおけるあいさつ行動・留学生グループの逸脱的日本語使用による冗談実践・「自己責任」をめぐるTwitter上の議論―から社会文化のコンテクストとともに構築される多様な「自己」の姿を提示する.様々なディスコースに埋め込まれ/創り出される「自己」を多角的に論じ,フィールドにおいてコミュニケーションが創る自己観を捉えることの意義を提起したい.

第2室 「教室場面での女性多人数会話における「笑い」の機能と性質―談話分析に表出する分析者の立ち位置―」

会 場
創新館本館J303
責任者
児島麦穂(大阪大学大学院)
司会者
木場安莉沙(大阪大学大学院)
発表者
泉谷律子(大阪大学大学院)
オユナー・ノミン(大阪大学大学院)
児島麦穂(大阪大学大学院)
薛桃子(大阪大学大学院)
張碩(大阪大学大学院)
中川佳保(大阪大学大学院)
山本由実(立命館大学)

 本ワークショップの目的は,女性多人数によって談話分析が行われる教室場面で発生する「笑い」を手がかりに,分析者の背景知識等に起因する立場の違いが分析にどのように影響するのか,分析者はそれにどう自覚的であるべきかについて討議することである.
 教室場面をポジショニング理論(Bamberg, 1997, 2004)を用いて分析した.この視点から,「笑い」の発生においては,分析行為を志向した制度的場面の中で起こる分析行為からのずれやずらしによって,教師・学生以外の関係性が構築されていることが明らかになった.また,分析者の背景知識等による立場の違いが分析にあらわれるということを確認した.
 以上を踏まえ,教室場面における多人数分析では,より多角的な視点が得られる一方,立場の違いという不均衡によって,共有される知見が限定されうることも指摘したい.

Bamberg, Michael. (1997). Positioning between structure and performance. In Bamberg, Michael (Ed.), Oral versions of personal experience: three decades of narrative analysis, Journal of Narrative and Life History, 7, 335–342.
Bamberg, Michael. (2004). Form and Functions of ‘Slut Bashing’ in Male Identity Constructions in 15-Year-Olds. Human Development 47, 331-353.

第3室 「人はいかに他者の考えを推測し,言語化するのか」

会 場
創新館本館J304
責任者
櫻田怜佳(日本女子大学大学院)
司会者
野村佑子(順天堂大学)
発表者
櫻田怜佳(日本女子大学大学院)
新家理沙(日本女子大学大学院)
杉崎美生(日本女子大学大学院)

 他者とのやりとりの中で,相手の考えや気持ちをすべて理解することは容易なことではないと考えられるが,人々は,しばしば相手が考えているであろうことを推測し,言及する.本ワークショップでは,このような場面で言語使用者がどのように相手の考えを言語化しているかについて(1)パブリック・スピーチ,(2)課題達成談話,(3)日常的な会話という3種類のデータを用いて分析する.異なる3つのインタラクションを分析した結果,話し手は,理解や共感を得たいという状況や,スムーズに会話を進行させたいという状況において,他者の考えを推測し,言語化する傾向があることがわかった.これら3つのデータ内において,話し手が,他者の考えや気持ちを言い表す際,どのような表現を用いて言語化しているかを場面ごとに明らかにすることから,最終的に,話し手が,他者の考えや気持ちを言い表すことによって何を行っているのかを考察する.

第4室 「質を量ではかる―質的・量的分析の相互補完的研究―」

会 場
創新館本館J306
責任者
吉川正人(慶應義塾大学)
司会者
吉川正人(慶應義塾大学)
発表者
北澤茉奈(慶應義塾大学大学院)
五所万実(慶應義塾大学大学院)
SPREADBURY Ash(慶應義塾大学大学院)

数量では表現できない言語データを扱う言語学では,従来,質的な分析アプローチがメインに行われてきた.しかし,近年,質的データをデータベース化し,効率的に量的分析が行えるソフトウェアが導入されたことで,質的・量的分析を掛け合わせた「混合分析(Mixed Methods)」が注目を集めている.記述の様相が異なる質的・量的分析は,それぞれ強みと弱点を有するため,相互に強みを生かしつつ弱点を補完する混合分析は,理想的な分析手法であると言える.そこで,本ワークショップでは,以下3件の談話分析における混合分析の実践例を通じ,質的分析を行う際の注意点を提起しつつ,混合分析の可能性や有効性を示していきたい.

実践1:
企業の経営理念に用いられるレトリックの対照分析(北澤)
実践2:
商標の類似性判断プロセスの可視化(五所)
実践3:
質的分析の質的問題(Spreadbury)