査読者心得・査読規定

査読者心得

2015年7月19日決定
2022年4月1日改訂

基本方針

  1. 査読者は投稿者の指導教員ではなく,投稿者と対等の研究者である.査読者はその原稿のよい点を積極的に見つけ,不十分な点については建設的なコメントをするなど,学会誌に原稿が掲載できるように努力する.
  2. 社会言語科学会は文系から理系までさまざまな分野の研究者が集まっている学会であり,研究テーマや研究方法,論文の書き方が多様である.査読では本学会の多様性を尊重し,自己の研究分野の研究方法や論文の書き方を押しつけないようにする.

査読期限について

  1. 投稿原稿の掲載可否の決定が遅れることは投稿者に大きな不利益をもたらすことを自覚し,査読期限を厳守する.やむを得ない事情があるときには,すみやかに担当編集委員に連絡する.

査読コメントの書き方

  1. 査読のコメントでは,学生に対するような指導的な表現や,客観性を欠いた感情的・攻撃的な表現を避け, 「ですます体」を用いた丁寧な口調を心がける.
  2. 査読者は投稿者の主張に賛成できなくても,投稿者の主張が明らかに誤っているという十分な証拠がない場合は,その主張を尊重し,過度の修正を要求しないようにする.
  3. 掲載可否にかかわるコメントか,そうではない参考コメントかを,できる限り明示する.
  4. 投稿原稿は,その種類によって分量の上限が規定されている.加筆を要求するコメントを書くときには,削除してよい部分を提案するなど,分量の上限を超えずに改稿できるように配慮する.その際,他の査読者から別の箇所に対して加筆の要求がある可能性が高いことにも留意する.

評価をする際の留意点

  1. 査読者は, 定められた修正期限内に投稿者が原稿を修正できる内容のコメントであるか, よく検討した上で, 評価を行う.
  2. 2回目の査読では,1回目に提示した掲載条件を満たしているか否かを判断する.なお,1回目の査読において(指摘できたにもかかわらず)指摘しなかったことを,2回目以降の査読において問題化し,それに基づいてD評価(掲載不可)とすることは避ける.

査読規定

2023年3月31日改訂

  1. 査読規定は,学会ウェブサイトで公開する.投稿規定や執筆要項のように学会誌に毎号掲載することはしない.
  2. 査読の手順は,以下のようにする.
    1. 著者は,投稿論文と指定された情報を,本学会の電子投稿システムを用いて学会誌編集委員会事務局(以下,編集事務局と略称)宛てに送付する.
    2. 編集事務局は,著者に対して,受稿の通知を出す.
    3. 学会誌編集委員会委員長(以下,編集委員長と略称)は,担当編集委員1名を決定し,投稿論文等審査資料を担当編集委員に送付する.
    4. 担当編集委員は,査読者2名を自身の権限と判断のもとに決定する.(なお,担当編集委員が査読者を兼ねることはできない.)
    5. 編集委員長は,査読体制の構成(担当編集委員と査読者名)を編集委員会に報告する.
    6. 査読者は,審査資料受領後1ヵ月以内に,電子査読システムの所定の手順に従って,「評価」と「担当編集委員へのコメント」「著者へのコメント」を担当編集委員に提出する.なお,査読者による審査結果を「評価」,担当編集委員によるものを「判定」と呼ぶ.
    7. 担当編集委員は,査読者の評価とコメントが届いてから2週間以内に,電子査読システムの所定の手順に従って,「判定」と「編集委員会へのコメント」「著者への総合コメント」を編集事務局に提出する.
    8. 担当編集委員および査読者は,論文の審査(評価・判定)を以下の4段階で行う.
      1. A そのまま掲載可
      2. B 修正の上,掲載可(修正期間は1か月以内, AおよびB「判定」となった場合は,修正結果については担当編集委員に一任)
      3. C 修正の上,再審査(修正期間は3か月以内)
      4. D 掲載不可
    9. 担当編集委員は,2名の査読者の評価が一致するときには,原則として,その評価に従い,一致しないときには,「担当編集委員役割」に定める手順に従って処理する.なお,査読者が投稿カテゴリーの変更を提案した場合,最終的な判断は担当編集委員が行い,その旨を編集委員長に報告する.
    10. B判定だった投稿の修正稿は,本来担当編集委員のみで査読をするが,場合によっては担当編集委員が査読者に依頼して修正稿に対するコメントを求めることができる.
    11. 編集委員長は,担当編集委員からの判定結果を確認し,必要に応じて担当編集委員および査読者と協議を行う.
    12. 編集事務局は,編集委員長の承認を経て,担当編集委員の「判定結果」と「著者への総合コメント」,および査読者の「評価結果」と「著者へのコメント」を著者に開示する.その際,担当編集委員および査読者の名前は著者に示さない.
    13. 以後の査読において,担当編集委員または査読者が交代する場合,あるいは第三査読者を選定する必要が出た場合は,編集委員長の了承を得て編集事務局がその旨を著者に伝える.
    14. 担当編集委員および査読者は,査読システム内の「投稿論文管理」ページにおいて,自らが関わる評価,判定,各種コメント,査読の進捗状況等を確認することができる.
  3. 査読の期限には,以下のように対処する.
    1. 査読期限については,1週間前および期限当日に,期限予告メールが査読システムにより自動配信される.
    2. 査読期限までに査読が間に合わない場合,担当編集委員はなるべく早めに編集委員長に連絡し,相談する.
    3. 担当編集委員は,査読者の査読の進行に注意し,必要ならば,催促その他の連絡をする.
    4. 編集委員長は担当編集委員の査読の進行に注意し,必要ならば,督促その他の連絡をする.
    5. 査読が長引いて,初回の査読依頼から3ヶ月経過しても査読報告がない場合,担当編集委員は査読者を別に立てて交替させることがある.
  4. 投稿者が査読結果について異議申立てを行ってきた場合は,すみやかに対処する.
  5. 担当編集委員は,原則として編集委員会の委員の中から選ぶ.ただし,特集号のエディターが編集委員以外の者であるとき,そのエディターも担当編集委員となることができる.
  6. 査読者は,本学会の会員から選ぶ.ただし,担当編集委員が特に必要と認めた場合,査読者の1名を本学会の会員でないものから選ぶことができる.
  7. 同じ投稿番号の査読は基本的に同一の査読者が行う.投稿カテゴリーを変更して再投稿された場合も,最初の査読者が査読を行う.ただし,査読者の申し出や担当編集委員の判断により,査読者を交代することがある.
  8. 最終的にDと判定した場合でも,著者が改訂して別の新しい投稿として再投稿してくる場合があり得るが,その場合は,新規投稿として,査読を行う.

査読者役割

2023年3月31日改訂

  1. 査読の秘密の厳守
     担当編集委員および査読者1, 2は,自ら査読を担当した論文に関わる一切のことを(その論文を自分が査読したという事実も含めて)口外してはならない.
  2. 査読規定
     編集委員でない査読者に対しては,電子査読システムへの登録を通じて査読のプロセスを理解しておくことが求められる.
  3. 投稿の種類(論文ジャンル)
    投稿原稿の種類は研究論文,展望論文とその他(資料,ショートノート)とする.
     なお,展望論文については,著者自身の視点が弱く,単に他者の研究紹介にすぎないものはあくまで教科書的なものであって,学会誌に掲載すべきものとは考えられない.
    1. 研究論文 ― 独創性のある実証的または理論的な論文
    2. 展望論文 ― 重要な課題に関する国内外の諸研究を幅広く検討し,独自の観点から総合的に概観する論文
    3. 資料 ― 言語資料,実験・調査の結果などの報告で,従来の学説の吟味検討や今後の研究展開に資することを目的とするもの
    4. ショートノート ― 萌芽的な問題の指摘,興味深い観察や少数事例に関する報告など,優れた研究につながる可能性のある内容,研究装置や研究方法に関する指摘・提案など
  4. 査読者1と査読者2について
     2名の査読者によって,投稿を異なる観点から見ることをめざすものであり,2名の査読者は対等の立場にある.
  5. 査読者が査読依頼の受諾後,利益相反等の理由により自分が適任ではないと判断した場合,早急に担当編集委員に連絡し,相談する.
  6. 二重投稿や(データの捏造・改ざんの疑い,被験者の個人情報や人権が守られていない,などの)研究倫理違反が疑われる場合は,速やかに担当編集委員に連絡する.
  7. 査読結果の記入
     「著者へのコメント」は原則として日本語で書く.ただし,場合によっては英語で書いてもよい.
  8. 査読の評価基準
    1. 論文の評価は以下の4段階で行う.
      • A そのまま掲載可
      • B 修正の上,掲載可(修正期間は1か月以内, AおよびB「判定」となった場合は,修正結果については担当編集委員に一任)
      • C 修正の上,再審査(修正期間は3か月以内)
      • D 掲載不可
    2. 「A(そのまま掲載可)」は,そのままあるいは字句の修正程度で掲載が可能な場合であり,論旨が変わらない範囲での修正が必要な場合は「B(修正の上,掲載可)」と判断する.なお,投稿者の修正期間は1か月以内である.
    3. 「C(修正の上, 再審査)」と判定された場合,投稿者の修正期間は3か月以内である.
    4. 「D(掲載不可)」と評価する場合は次の通りである.ただし,「著者へのコメント」において,その論拠を具体的に述べることが求められる.
      1. 当学会の分野(言語・コミュニケーションを人間・文化・社会との関わりで研究する)ではない.
      2. 本質的な誤りがある.
      3. 内容の程度が低く,論文としての重要性がない.
      4. 他の媒体(雑誌など)に既発表または公知であり,新規性がない.
      5. 論旨が不明瞭で議論構成が弱く,修正稿においても改善の見込みがない.
      6. 推敲や書式の統一が不十分であり,形式的な完成度が甚だしく低い.
    5. 査読者/担当編集委員は,同一番号の投稿に対して,原則として2度連続してCと評価/判定することはしない.C評価にせざるを得ない場合は,編集委員長を含めて協議を行うものとする.
    6. 2名の査読者の評価がAとD,またはBとDに分かれた場合は,第三査読者が選定される.第三者査読者は,それまでの査読結果を参照の上,A,BまたはDの評価を行い,原則としてC(修正の上,再審査)を選択することはできない.C評価にせざるを得ない場合は,編集委員長を含めて協議を行うものとする.

    担当編集委員役割

    2023年3月31日改訂

    1. 誓約書等の確認
       担当編集委員は,投稿論文の誓約書を確認し,類似の自己論文についての申告があった場合には内容を確認する.なお,誓約書の内容は,査読者には開示されない.
    2. 査読における担当編集委員の「判定」について,論文の評価は以下の4段階で行う.
      • A そのまま掲載可
      • B 修正の上,掲載可(修正期間は1か月以内, AおよびB「判定」となった場合は,修正結果については担当編集委員に一任)
      • C 修正の上,再審査(修正期間は3か月以内)
      • D 掲載不可
    3. 査読者1・2からの報告に基づき,編集委員会に第2項における「判定」を提案する.担当編集委員から著者へのコメントには,新たな提案は極力控え,必要最低限のコメントにとどめることを基本とする.ただし,査読者間でコメントや改訂の方向性について齟齬がある場合,著者に対して補足説明をしたり,収束に向けたコメントや助言を行なったりすることができる.また,自己引用等が不十分である場合は,担当編集委員から著者へのコメントにおいて明確に伝え,改稿原稿に反映するように求める.ただし,査読者もこのコメントが閲覧できるため,コメントには著者が特定できるような情報を含まない書き方にする(例えば,「本稿のテーマに関係すると思われる2020年出版のご自身の論文も引用してください.」など,適宜表現を工夫する).
    4. 担当編集委員による「判定」は,以下の基準に基づいていることが期待される.ただし,査読者が編集委員でない場合,A~Dの評価方法に揺れがある場合もあるので,「著者へのコメント」,とりわけ評価の理由付けを注意深く検討して,査読者の真意を汲むことに努める.
      1. 2人の査読者がA評価の場合,「A そのまま掲載可」を提案する.また,2人の査読者がD評価の場合,「D 掲載不可」を提案する.ただし,D判定は明示できる決定的な難点が論文に存在するときにのみ適用されるべきものであり,査読者1・2の評価が,「総合的に見て水準に達していない」「学会誌の論文にふさわしくない」などのあいまいな論拠による場合は,その真意を質して明示的に補足することが期待される.
      2. 2人の査読者の評価がAとBもしくはBとBの場合,著者に必要な修正を求め,その結果を担当編集委員がチェックした上で「A そのまま掲載可」または「B 修正の上,掲載可」を提案する.この場合,著者による修正は1カ月以内に行うものとする.担当編集委員の判定がB評価の場合は,A評価になるまで,投稿者の修正が続く.ただし,投稿者が途中で辞退した際はこれに含まれない.
      3. 査読者の評価がAとC,またはBとC,または両方ともCの査読結果に対しては;
        1. 「C 修正の上,再審査」を提案する.担当編集委員は,判定結果と審査の内容を伝えるコメントを作成する.査読コメントの全てについてどのように対応したかを回答メモに明記し,改稿とともに3ヶ月以内に電子的に再投稿するよう著者に伝える.
        2. 担当編集委員は,回答メモが添付された改稿が再投稿されたら,速やかに初回と同じ2名の査読者に再査読を依頼する.
        3. 再査読に際しては,査読者はA(掲載可),B(修正の上,掲載可),D (掲載不可)の評価および「著者へのコメント」を,そして必要ならば「担当編集委員へのコメント」を合わせて報告する.再査読では,査読者はC(修正の上,再審査)を選択することはできない.
        4. その結果に応じて,担当編集委員は(a),(b)または(d) を行なう.
      4. 第1回目,第2回目のいずれの査読においても,2名の査読者の評価がAとD,またはBとDに分かれた場合,担当編集委員は直ちに第三査読者を選定して査読を依頼し,その評価にもとづき判定を行う.第三査読者は,それまでの査読結果を参照の上,A,BまたはDの評価を行なう.(第三査読者は,原則としてC(修正の上,再審査)を選択することはできない).その結果に応じて,担当編集委員は上記 (a) または (b) を行なう.
      5. 判定がCとDだった場合,
        1. 「C 修正の上,再審査」を提案する.担当編集委員は,判定結果と審査の内容を伝えるコメントを作成する.C評価の査読コメントの全てについてどのように対応したかを回答メモに明記し,改稿とともに3ヶ月以内に電子的に再投稿するよう著者に伝える.なお,原則としてD評価のコメントに対する回答は求めないが,著者からD評価コメントに対する回答(反論やコメント)が送られてきた場合も,査読者は閲覧することができる.
        2. 担当編集委員は,回答メモが添付された改稿が再投稿されたら,速やかにCと評価した査読者に再査読を依頼する.
        3. 査読者はA(掲載可),B(修正の上,掲載可),D (掲載不可)の評価および「著者へのコメント」を,そして必要ならば「担当編集委員へのコメント」を合わせて報告する.再査読では,査読者は原則としてC(修正の上,再審査)を選択することはできない.
        4. 担当編集委員は,再査読の結果がD評価の場合には「D掲載不可」を編集委員会に提案する.
        5. 再査読の結果がAかBの場合には(d)に従い,改稿を第三査読者に回す.第三査読者は,それまでの査読結果を参照の上,A,BまたはDの評価を行なう.(第三査読者は原則としてC(修正の上,再審査)を選択することはできない).その結果に応じて,担当編集委員は上記 (a) または (b) を行なう.

    以下にその経過を図示する.

    • *第1回査読でC評価を付けた査読者の第2回評価と,第三査読者の評価がA-D,B-Dとなった場合は,第1回査読でD評価を付けた査読者のD評価とあわせ,2名の査読者によってD評価がなされたということで,最終判定はD判定となる.
    • **担当編集委員の判定がB評価の場合は,A評価になるまで,投稿者の修正が続く.ただし,投稿者が途中で辞退した際はこれに含まれない.

    [補遺]: 審査過程でやり取りされる報告内容