2023年9月 社会言語科学の方法としての「比較」

社会言語科学会講習会2023秋:社会言語科学の方法としての「比較」

趣旨

「比較」はどのような科学においても重要な方法の一つである.特に社会言語科学においては,言語やその使用の多様性を捉えることが重視されるが,さまざまな多様性の持つ意味を学術的に明らかにしていく上で,「比較」という営みは欠かせないであろう.
その一方で,一口に「比較」と言っても,学際的組織である社会言語科学会では,それぞれの下位領域や研究テーマ,研究手法などに応じて,「比較」の意味するところや,その具体的な方法などは異なっているかもしれない.
そこで,今回の講習会では,「比較」をキーワードとして,下記の3つの分野を取り上げ,それぞれにおける「比較」の意味や重要性,手続きなどについて,理解・再考する契機となる講習を企画した.
当日はシングルセッションで3つの講習を順に行う.各参加者が自分に近い分野のものだけでなく,3件すべての講習を受講することによって,「比較」についての分野ごとの考え方の違いについてもぜひとも「比較」してみていただきたい.3件の講習後にはグループに分かれてのディスカッションの時間も設ける予定である.

各講師と主なトピック(講習の順序は下記の通りの予定)

1.ツォイ・エカテリーナ(一橋大学)「対照言語学と言語教育」

本セッションでは,言語教育に大きく貢献してきた対照研究を,あくまでもアプローチ方法の一つとして位置づけ,その利点と留意すべき点を示す.大前提として,複数の言語を比較対照させる手法は,その言語の特徴や性質の解明に有効であるものの,比較そのものが研究の目的ではない.そのため,まず「何のために比較するのか」を明確にする必要がある.その上で,「何を比較するのか」(分析対象として扱う現象),「何を使って比較するのか」(分析データは研究目的に適したものなのか,その収集方法は適切であるのか),そして「どのように比較するのか」(分析対象の特徴や性質を適切に評価するための基準および尺度が設定されているのか)に焦点を当て,言語教育における対照研究の適用可能性を考える.

2.吉川正人(群馬大学)「理論言語学と類型論」

理論言語学的な研究実践は,「言語とは~である」という一般的な言明を主張することを目標としていることが多い.そのため,類型論的視座や進化言語学的視座が重要となる.この点について,言語の「普遍性」「個別性」「特異性」という3つの視点から確認・整理する.「普遍性」「個別性」は複数言語間の比較,「特異性」はヒトと他の生物やAIとの比較を含む視点である.そのような実践に際して自ら複数言語の事実を調査・収集することは事実上不可能に近いことから,他の研究者が収集した事実やデータに基づいて議論する二次的な議論,あるいはそのような二次的な議論を再検討する三次的な議論というオプションを選択することが通常である.そのため,理論言語学的な研究実践では「事実そのものよりもその解釈を重視する」,そして「他者の収集したデータや事実,あるいは他者の議論を利用することを過度に厭わない (厚顔無恥を恐れない)」という二つの姿勢が重要であるということを,その際の注意点も交えながら説いていく.

3.名塩征史(広島大学)「コミュニケーション活動のタイプ」

我々が日常的に遭遇し参与する相互行為は、たいていは何かしらの活動の中に埋め込まれている。活動を構成する個々の行為は、その活動に志向する人、活動の目的、活動の環境によって状況づけられることで、その真意が特定可能となる。したがって、理論上は、同じ行為であっても、埋め込まれる活動のタイプが異なれば、その真意も異なる可能性がある。本セッションでは、「活動の中の相互行為分析」における基本的な概念(活動、相互行為、マルチモダリティなど)について概観した上で、いくつかの活動のタイプを比較して見えてくる差異、すなわち、ある特定の発話/行為の意味機能が活動間で異なることを例示し、そうした差異を意識した分析と考察の重要性を考える。また研究実践において、当該活動の特徴を見極めるためにはどのような観察と分析が有効か、また、そうした特徴を、文字化資料の作成や図表の活用などを含め、どのように記述すべきかについても検討する。

定員

60名(定員を超える応募があった場合には,講師・委員で相談の上で多少の増員も検討)

形態

対面開催
(今後の社会状況によってはオンライン開催に変更の可能性もあるが,ハイブリッド開催にはしない.オンライン開催ではZoom等を使用する予定.)

日時・場所

2023年9月17日(日)13:00-17:00
慶應義塾大学三田キャンパス西校舎1階515教室

参加費

一般会員 2,000円, 学生会員 1,000円
一般非会員 3,000円,学生非会員 1,000円

参加申込方法 (受付はすでに終了しています)

<先着順>とします.こちらのページからお申し込みください.

 参加申込期限:2023年9月10日(日)

  • お申し込み後に社会言語科学会事業委員会(jass.seminar[at]gmail.com)よりメールにて参加承認のご連絡をいたします.
  • 参加費の支払方法(銀行振込)は参加承認のメールにて併せてお知らせいたしますので,メールに記載された期日までにお支払いをお願いいたします.
  • メール記載の振込期限を過ぎた場合はキャンセルとさせていただきます.
  • 振込手数料はご本人負担となります.また,振込後の返金にかかる手数料も,お申し込み者のご負担となります.
  • 「会員」として申し込まれる際は,申込時に会員である必要があります.入会希望の方は先に入会手続きをお済ませください.
  • 申込時に領収書を希望された方には,講習会会場にてお渡しするか終了後にメールで送付いたします.
  • 定員に達した場合には社会言語科学会のホームページおよびメーリングリスト等でお知らせいたします.定員以降の申込分はキャンセル待ちとさせていただきます.ご参加いただけない可能性もあることをご了承ください.

問い合わせ先

ご不明な点がありましたら,社会言語科学会事業委員会(jass.seminar[at]gmail.com)宛にお問い合わせください.