第5回スチューデント・ワークショップ

日時:
2024年9月14日(土)10:00-12:00
場所:
大阪大学豊中キャンパス https://www.let.osaka-u.ac.jp/ja/access

スチューデント・ワークショップの受付はありませんので、直接各部屋にお入りください。
ワークショップの会場:文法経講義棟1、2、4階 (「会場案内図」

参加費:無料

第1室 相互行為が目指すものとは―参与者間の認識・態度の差異に注目して

会 場
文11講義室(1階)
責任者
相馬果歩(日本女子大学大学院)
司会者
松宮いずみ(日本女子大学大学院)
発表者
松永遥花 (日本女子大学大学院)
川田優花 (日本女子大学大学院)
星野美裕 (日本女子大学大学院)
相馬果歩 (日本女子大学大学院)

 日常のコミュニケーションにおいて、会話参与者間で認識や態度の完全な一致が常に達成されているとは限らない。会話参与者たちは差異を感じたとしても、その差異を解消することなく、会話を進行・収束させることがある。本ワークショップでは、会話分析や相互行為の社会言語学の観点から、(1) 日常会話における語りの受け手が応答として用いる形容詞「すごい」、(2)日常会話における「まあでも」の使用、(3)英語の日常会話における強調のdoの使用、(4)スポーツ実況中継における進行役と解説者のやりとりに注目する。会話の参与者たちが認識や態度の差異を意識しながらも、完全な一致を達成せずに、会話をどのように進行させていくかを分析することにより、どのように相互行為が遂行されているのかを明らかにしたい。

第2室 相互行為に見られる関係性のダイナミックス―会話分析による関係性の再考察

会 場
文12講義室(1階)
責任者
梁勝奎 (名古屋大学大学院)
司会者
梁勝奎 (名古屋大学大学院)
発表者
梁勝奎(名古屋大学大学院)
馮佳誉(関西学院大学大学院)
西阪亮(関西学院大学大学院)
真田厚毅(京都大学大学院)

 本ワークショップでは、相互行為に織り込まれる人々の関係性に的を絞り、相互行為の中で、関係性がどのように参加者の間で参照され、利用され、または構築されるのかについて、会話分析の観点から考察を行う。そして、人々の相互行為における関係性の一様相を浮き彫りにすることを目的とする。
 上記の目的を実現するために、本ワークショップは、① 依頼行為を遂行する際に用いられる謝罪表現によって示される話者間の「上下関係」、② 会話に見られる自己と他者の「比較関係」、③ 意見がなされた後に見られる話者間の「陣営分け」、 ④ 親しい関係性において用いられる「敬体」によって変化する「参加フレーム」 といった、相互行為における話者間の関係性の利用や構築に関わる分析を行う。それぞれの現象において、話者間の関係性がどのように用いられるのか、それぞれの関係性の表明が相互行為の展開においてどのような働きを持つかを探求する。以上の現象を分析することによって、刻一刻と展開する相互行為の中で関係性が相互行為の中でどのように示され、展開されるかについて考察する。

第3室 子どもの日常活動の不明瞭な移行過程―会話分析の視点から

会 場
第22講義室(2階)
責任者
乾友紀(大阪大学大学院)
司会者
尾崎萌子(慶応義塾大学大学院)
発表者
乾友紀(大阪大学大学院)
尾崎萌子(慶応義塾大学大学院)
菊池春花(大阪大学大学院)
三浦真子(コロンビア大学大学院)
林剣鴻(大阪大学大学院)

 日常的な活動の不明瞭な移行について、大人と子ども、及び子ども同士のやり取りを会話分析の視点から発表する。不明瞭な移行とは、段階的な活動の始まりと終わりを指す。参加者の活動へ参加するモードは絶えず変動し、活動は多層的に行われる。
 前半では、遊びと衛生・食事の活動の移行過程を分析する。例えば、食事からごっこ遊びへの移行は食事中から既に始まっている。また保育園での遊びからおむつ替えへの移行も保育者と幼児の応答により段階的に始まる。
 後半では、絵本の読み聞かせに焦点を当て、他の活動からのシフトやページめくりを分析する。英語教室では、教師が生徒の好みを問い、全員の情報が均等化された時点で絵本の登場人物への質問に切り替える。家庭での寝る前の読み聞かせでは、親子がおもちゃの片付けや絵本選びを通じて読み聞かせに移行する。ページめくりでは、親が子どもに絵本に集中させるための段階的な誘導を行う。

第4室 移動とことばの諸相―移動における「制限」を軸に

会 場
第23講義室(2階)
責任者
山本由実(同志社女子大学)
司会者
児島麦穂(三重大学)
発表者
稲葉皐(大阪大学大学院)
川端映美(大阪大学大学院)
岸田月穂(大阪大学大学院)
張応謙(大阪大学大学院)
山本由実(同志社女子大学)

 現代における移動範囲の拡充は日常の様相を変容させ、私たちの認識や行動様式、そしてことばのあり様にも大きな影響を及ぼしている。近年、さまざまな移動の事例と方法論により言語使用のリアリティが明らかになりつつある。本ワークショップは、三宅・新井(2021)が扱った物理的な移動に加え、ウェブ空間での移動も分析の射程に入れ、移動を経験した者、移動を取り巻く者のインタビュー・データを用いて議論を進める。5つのセッションでは、移動の際に直面する自身や周囲の者の社会規範や価値観、制度的な問題の影響により発生する「制限」を軸に、言語使用や言語にまつわる問題を分析する。本ワークショップは移動を基点とし、個人、及び社会の変容を読み解いていく試みである。「制限」に影響を受け、個人の言動や社会のあり方が修正、調整され変化する様を明らかにする。本ワークショップの議論が、「移動」が包摂する範囲が絶え間なく拡充する現代における変化の様相を多角的に捉え、深く理解するための一助となることを目指す。

第5室 国家と身体の間:生殖の言説を読み解く

会 場
文41大講義室(4階)
責任者
LI HENGCONG(大阪大学大学院)
司会者
LI HENGCONG(大阪大学大学院)
発表者
LI HENGCONG(大阪大学大学院)
KANG KIWON(大阪大学大学院)
新井凜子(大阪大学大学院)
陳凱歓(大阪大学大学院)
蘇暁笛(大阪大学大学院)
周氷竹(大阪大学大学院)

 個人の出産と育児に関する選択は、国家レベルの権力による一方的な影響を受けるだけでなく、個人の意志や社会的な期待、文化的な規範などによっても形作られている。本ワークショップは、国家と身体の関係性を、政治と生殖、技術と生殖、モビリティと生殖の3つの視点から問い直す。
 セッション1では、国家の言説に焦点を当て、政府の「母性」をめぐる言説や、HPVワクチンの男性への接種の政治的背景の分析から、統制と抵抗のダイナミクスを明らかにする。セッション2では、中国人女性の出産経験から生殖の言説を分析し、政治的・社会的言説が生殖技術への考え方や出産の経験に与える影響を考察する。セッション3では、在日外国人女性のママ友関係をめぐる経験や葛藤から、多文化共生の時代に日本で産み育てることの課題を明らかにする。
 以上、本ワークショップでは、政治と生殖、技術と生殖、モビリティと生殖といった視点から、政治的・社会的言説が出産や育児、身体の管理に与える影響を明らかにすることを試みる。