第4回スチューデント・ワークショップ

日時:
2023年9月16日(土) 10:00〜12:00
場所:
桜美林大学町田キャンパス
(スクールバスの情報もご確認できます)
https://www.obirin.ac.jp/access/machida/
スチューデント・ワークショップの受付はありませんので、直接各部屋にお入りください。
ワークショップの会場:明々館3、4階 (会場案内図
参加費:
無料

第1室 相互行為秩序を解剖する言語研究:会話分析の観点による言語研究再考

会 場
明々館3階BM304
責任者
梁勝奎 (名古屋大学大学院)
司会者
梁勝奎 (名古屋大学大学院)
発表者
岸本健太 (関西学院大学大学院)
馮佳誉 (関西学院大学大学院)
梁勝奎 (名古屋大学大学院)
戎芸 (関西学院大学大学院)
王嫻 (名古屋大学大学院)
郭浩然 (関西学院大学大学院)

 本ワークショップは、会話分析の立場からこれまでの言語研究のテーマを再考し、言語研究の新たな可能性を探る試みである。会話を形作る個々の行為はさまざまな資源を利用した総合的な産物であるがゆえに、「言語」という一部分ではなく、「行為」というパッケージとして捉えることで、人々のふるまいをよりリアルに描き出すことができると考える。
 こうした考えのもとに、従来の言語研究でも扱われてきた5つのテーマについて、会話分析の立場から①接触場面における非母語話者の「知識の状態の表明」、②日本語学習者の母語会話における「コードスイッチング」、③感謝をする際に用いられる「謝罪表現と感謝表現」、④質問-応答のやりとりにおける「チーム形成」、⑤話し合い場面における「否定的な評価」を分析し、それぞれの現象の生起メカニズムを解明する。
 文脈に応じた人びとのふるまいを記述することで、参加者がいかにして、その都度の文脈にあわせて自分のふるまいをデザインし、他者のふるまいを理解するのか、といった一連の相互行為秩序を明らかにすることを試みる。

第2室 大学院専門科目のハイブリッド授業における共通基盤の構築のプロセス

会 場
明々館3階BM305
責任者
張応謙(大阪大学大学院)
司会者
張応謙(大阪大学大学院)
発表者
児島麦穂(三重大学)
山本由実(大阪大学大学院・同志社女子大学)
山口篤美(大阪大学大学院・名城大学)
稲葉皐(大阪大学大学院)

 本研究の目的は、コロナ禍を経て変容した授業形態において、大学院専門科目の授業参加者が新たな参与形式を身に着けていく様子を共通基盤構築の観点から経時的に明らかにすることである。本研究は、教員を含む参与者たちが参加する授業での発表と議論の録画録音データをマルチモーダル分析と参与枠組み理論を用いて分析する。その上で、授業の長期参加者であるからこそ詳細に捉えられる授業現場における相互行為の特徴の移行を考察する。
 分析の結果、ハイブリッド授業における不均衡状態は、教員や発表者が対面とオンラインの場を繋ぐ役割を担うことにより解消されていた。また、参加者たちがコロナ以前から持っていた授業参加に関する認識を元に共通基盤を構築し、新しい授業への参与形式を創発的に構築していったと言える。このように、新しいメディアが使用され多様化する授業内コミュニケーションに教員・学生が柔軟に対応すること、またその変化のプロセスを共通基盤の観点から捉えられることが明らかになった。

第3室    日常の言語使用から捉えるPhaticity-ディスコースからインター・ディスコースへ-

会 場
明々館3階BM306
責任者
楊留(筑波大学大学院)
司会者
小林かおり(日本女子大学)
発表者
楊留 (筑波大学大学院)
杉崎美生 (日本女子大学)
新家理沙 (筑波大学大学院)

 ことばの交感機能(phatic function)は、概して、コミュニケーションの回路や接触に重点を置く機能として理解されている。それは、コミュニケーション様式や手段が日に日に進化する現代社会における人々の思考と言動を捉えるための重要な概念であるが、ヤコブソンによる定義以降、言語理論として焦点を当てられることは少ない。本ワークショップでは、今までの研究の潮流を踏まえつつ、日常のディスコースにおける特定の語用から会話のパターン、さらには間ディスコース的な言語行動に着目し、それらを交感性の観点から捉え直す。具体的には、①日本語会話における「なんか」の使用、②英語会話における提案と応答、③中国のソーシャルメディアにおける「隔空喊话(エアリプ)」と呼ばれる言語様式をデータとして取り上げ、分析的記述を行う。それらの研究を通して、日常的な言語使用に見られる交感性の様々な側面や、そこから生まれる連帯感を追究したい。

第4室 定型性の奥深さ:コミュニケーションにおける意味と創造性の探求

会 場
明々館4階BM402
責任者
西山遥(慶應義塾大学大学院)
司会者
北澤茉奈(慶應義塾大学大学院)
発表者
北澤茉奈(慶應義塾大学大学院)
尾崎萌子(慶應義塾大学大学院)
西山遥(慶應義塾大学大学院)
細谷諒太(慶應義塾大学大学院)
草場千紘(慶應義塾大学大学院)

 言語の定型性は発話の理解と産出を効率化するだけでなく、拡張的表現を生み出す基盤としても機能する。拡張的表現を創造し利用することは、同一集団への帰属意識の構築、スタンスの交渉、皮肉やユーモアの創出など、コミュニケーションを行う上で様々な機能を果たす(Wray 2002など)。本ワークショップでは、定型性という概念を定型表現に留まらず行為や現象などより広い範囲に適用できるものと捉え、5つの事例研究を紹介する。各ジャンルにおける定型性の現れ方や、コミュニケーションの資源としての定型性の利用方法について考察し、定型性という概念そのものについて理解を深める機会としたい。
    事例1: 句や節が名詞を前置修飾する英語表現の定型性と創造性
    事例2: 言語の垣根を超えたオノマトペの定型性と創造性
    事例3: パブリック・ディスコースにおける定型性及び創造的言語使用の変遷
    事例4: 定型的な初対面会話をこどもが習得するプロセスの日米比較
    事例5: 討論における戦略的な定型的効果

第5室 不確実性の時代で、共感を問い直す

会 場
明々館4階BM403
責任者
周氷竹(大阪大学大学院)
司会者
周氷竹(大阪大学大学院)
発表者
周氷竹(大阪大学大学院)
乾友紀(大阪大学大学院)
LI HENGCONG(大阪大学大学院)
王嘉成(大阪大学大学院)

 共感という概念は、社会学、心理学などの分野で議論され、一般的に、相手の考えや気持ちを理解し、相手の期待に添おうとする態度であるとされている。本ワークショップは、規範としての共感、儀礼としての共感、また、境界を超える共感といった視点から共感を捉えることを試みる。
 セッション1では、言語社会化の視点から子ども同士の相互行為を分析し、子どもがどのように共感を示す・示さないのかを明らかにする。セッション2では、国会の野次に着目し、政治家が野次を通じてどのように発言者に共感を示しているかを考察する。セッション3はTandem学習と親友同士の会話例を取り上げ、異文化コミュニケーションにおける共感について、比較し考察する。
 分断が続き、他者を理解できる共感力が求められている今、本ワークショップは共感を捉える多様な視点について示唆を与え、談話研究によるミクロな観点からの共感の分析が人々の連帯の諸相を明らかにすることの一助になることを期待する。